過去の活動報告

2006年度総会レポート

本年度総会・講演会・懇親会は立教観光クラブ創立45年の記念総会として7月12日、池袋のホテルメトロポリタンにて多くの来賓をお招きし、約250名の会員の出席により開催されました。今回の講演会は、45周年の記念講演会として、シンポジウム形式で行われました。また懇親会では、豪華賞品が揃った恒例のドアプライズを始め、大いに盛り上がりを見せました。

開催要項

■日時・場所

 2006年(平成18年)7月12日(水)

 (総会:17:00〜17:45/講演会:17:45〜18:45/懇親会:19:00〜21:00)

 ホテルメトロポリタン 3階 富士

観光クラブ賞

●#78

 清水 誠氏(昭和41年経済学部経済学科卒)

   日本旅行OB、中村学園大学短期大学部教授


●#79

 岡田 愛氏(昭和46年社会学部観光学科卒)

  JTBワールドバケーションズルック専任コンダクター


●#80

 杉本美樹枝氏(昭和39年社会学部社会学科卒)

  ユーリーグ 生き生き事業部長兼広報部長

講演会(シンポジウム)

■パネリスト

 舩山龍二氏
 (JTB会長:立教大学観光学部教授)
 甲田浩氏
 (元ホテルニューオータニ副社長:立教大学観光学部教授)


■コーディネーター

 岡本伸之氏
 (立教大学観光学部教授)


■議題

 「観光振興の課題 国際観光国内観光
  ここが問題、こうすればよくなる 」


■レポート

 岡本

  本日は舩山先生、甲田先生という今や立教大学観光学部の看板教授ともいえるお二方におこしいただいきました。現役のオピニオンリーダーからお話をうかがって参ります。


 舩山

  ジェイ・ティー・ビーで社長、会長と務める間に、私が重点的に手がけたのはリストラです。この産業は、業界のトップに立つ人が強い意志を持って経営に臨まなければなりません。近年、歴代総理で初めての観光立国宣言がありました。狙いは、産業の活性化にあり、観光産業も注目されたわけです。政府は 2010 年までに外国人訪日旅行者を 1 千万人までにすることを目指しています。
  このように国策としてインバウンドが取り上げられたのは今まで 3 回ありまして、最初は明治 4 年に、岩倉具視一行が世界一周して、学んできたことがきっかけでした。彼らが日本に戻ってから鹿鳴館などを作り、ジェイ・ティー・ビーの前進となるジャパンツーリストビューローもできました。
  2度目は昭和 38 年で、私の入社翌年にあたります。このときに観光基本法ができ、その次の年には東京オリンピックが開催されました。そして、今回のビジット・ジャパン・キャンペーンへとつながります。観光産業の裾野は広く、全体では 24 兆円と大きな経済的パワーを持っている上、旅行産業は、国際相互理解の推進も重要視されています。また、今、東京や名古屋は景気がよくなっていますが、地方はいまだに厳しい状況です。こうした地域を活性化する事業として観光は期待されています。


 甲田

  今朝、米国の友人から『ホテルビジネス』という雑誌が届きました。その最初の 10 ページ以上がホテルの売却や買収の話ばかりで、ホテルの真髄の話はでてきませんでした。コーネル大学のホテルスクールでも、卒業生の 80 %がゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどに就職すると学部長がなげいています。給料の安いホテル産業に就職する意味があるのかと言われてしまうのです。これについて説明するのは大変ですが、ホテル・観光産業は 21 世紀最大の産業であることは間違いありません。
  現在、東京には外国系ホテルが相次いで進出しています。東京は質の高いツーリストのターゲットとみられており、投資家の外国ブランドに対する信頼は必要以上に高く、さらには、最近はホテルの所有、経営、運営が断ち切られたマネジメント・コントラクトが花盛りなので、外国系の運営ホテルが進出しやすいようです。しかし、これらのホテルが本当のホスピタリティを提供しているかは疑問です。なぜ、日本のホテルがそのような評価に値しないのかは反省すべきところですが、今こそ、日本のホテルや旅館が誇りをもって、いい意味での連帯することが必要でしょう。


 舩山

  旅行業は給料が安くて忙しいと学生からも指摘されたことがあります。ここで重要なのは、われわれのビジョンのアピールの仕方です。会社を 3 年でやめる人が多いですが、この会社が今何をやっているか、どこにむかっているのかということを示さなければなりません。
  私が社長になったとき、まず、いい会社にしようと社員に言いました。そのためにまず、お客様に利便性を提供し、社会的に有用であることが重要だと考えました。2つめは利益を出し、株主に還元することです。その中では、税金を払って国や地域に還元することも重視しています。3つめは、社員が給与を稼ぐだけでなく、絶えず創造と挑戦を繰り返す、それを上が認める、そういう会社にしようと申し上げました。ここ数年の旅行会社の特性をみると、天下りが多いようですが、親会社のカルチャーや考え方で経営しようとする姿勢はおかしいと思います。
  ここ 10 年の経営の最大の課題は変化にいかに対応するかという、この 1 点にかかります。


 岡本

  ホテルも天下りが多いですね。


 甲田

  ホテルは金融関係からの天下りがあります。それなりの資質と高い志を持っている方もいますが、「ホテルってこんなに儲かんないの?」といわれたこともあります。
  今のホテル経営の課題は、権限の委譲の仕組みが十分にできていないことだと感じています。権限を持つ GM がどれだけいるのでしょうか。社長と兼務の場合は別ですが、実は、枠が決まっていて、新しい思索を打ち出せない上に忙殺されているのが現状です。
  また、ホテル産業の中では、ともに助け合うところが欠落しています。商品やマーケティングで競うのはもっともですが、管理部門で抱える似通った問題を共有してはどうでしょうか、人事制度や、管理、情報システムを共有すればよいと思います。


 岡本

  本日のシンポジウムを通して、変化にいかに対応するかが課題であることがわかりました。とにかく、 There and now 、今ここで何をなすべきかを考えるべきなのですね。本日はありがとうございました。